坂橋矢波(東京フィルハーモニー・フルート奏者)のドラマチック・エッセイ
「THE FLUTE」より NAHOKフルートカバー誕生の巻

「お~、かっこいいなあ、いいの持ってるねえ。」
オーケストラのリハーサルで、必ず話題になるのが僕のフルートケースカバー。
それだけで、リハーサルが始まるまで盛り上がるのだから、驚き。
初夏のある日、「フルートケースカバーを作ったから、見て欲しい」
というメールをもらった。発信者は、度々コンサートをご一緒する木村奈保子さん。
「あなたのハートには何が残るでしょうか?」の名台詞でおなじみの解説者であり、実は、ご本人も映画音楽を歌う音楽仲間である。

早速、西麻布のあとりえNAHOK(ナホック)にお邪魔したら、
生地をカットしている木村さんがいた。
棚には、カラフルなバッグがたくさん展示してあり、
そのなかから発色のいい、オレンジ色の細長いバッグを取り出し、
すぼっと僕のハードケースに。これまでカンヌ映画祭など各国にでかけるとき、
父親の仕事を手伝い、生地の輸入を自ら行ってきた木村さん。
ドイツの工場で色を混ぜている職人さんと話しているとき、
この欧州カラーと素材の魅力は、遊び心のある音楽仲間に受けるのでは、
と思いついたという。かねがね、もっとおしゃれで、
ゴージャスなケースはないのか、とフラストレーションを起していた僕は、
「これだよ、これ!」と飛び上がった。

しかし僕が、その見本を持ち歩いている間に、
もっとサイズをタイトにしたらどうか、別の生地バージョンはこれです、
さらに、フラップとの組み合わせによるカラーコーディネートの面白さまで、
これでもか、というくらいに、次から次へと試作品を見せてくれる。
この辺で完成かと思っていると、さらにデザインが加えられており、
木村さんのこだわりと、突き動かされるようなエネルギーには圧倒されるばかり。
ものづくりが、加速度的に洗練されていく過程には感動を覚えたほどだ。
「今回私を動かしたのは、なんといっても音楽家への敬意ですね。」と木村さん。

ドームテントなどに使われる特殊な生地と、
加えて精密機器に対応する欧州製の特殊断熱材を組み合わせた逸品が完成した。
僕は、白に緋色のフラップをセレクト。さらにH管のケースカバーがすっぽり入る、
緋色のスコアブリーフを持って出かける。
大きなオケ用の楽譜が収まり、見た目はコンパクト。
何より目立つ!軽い!中から、おそろいのケースカバーと
ペンケースが登場するコーディネート・・・心憎い演出だ。
雨の日は、リュックベルト2本にして、背負うころができるからますます便利。
完全防水の生地は雨を通さないが、まだまだとばかりに止水ファスナーを採用。
しつこいほどの研究ぶりで、さすがのこだわり。
いま、NAHOKケースの色を日々使い分けながらわくわく感を楽しんでいる。
ぼくの気持ちが音にも出ていたら、こんなに嬉しいことはない。